偏食とは?好き嫌いとの違いと原因・家庭でできる対処法【管理栄養士が解説】

毎日同じものしか食べない。せっかく作ったのに、一口も手をつけない。野菜を見ただけで顔をそむける。

こうした毎日が続くと、「うちの子は偏食なのでは」「私の育て方が悪いのでは」と不安になりますよね。多くの親御さんが、同じことで悩んでいます。

偏食とは、食べられる食品の種類が極端に少なく、一度食べた物でも拒否するなど、食事の内容が大きく偏る状態のことです。

単なる好き嫌いより範囲が広く、生活に影響が出る点で区別されます。ただし、幼児期の偏食の多くは発達の一過程であり、家庭での関わり方で少しずつ広げていけるものです。

この記事では、好き嫌いとの見分け方、原因の3タイプ、何歳まで様子を見てよいか、そして家庭で今日からできる対処法を、料理教室で子どもたちの「食べた」を見てきた管理栄養士の視点でお伝えします。

偏食とは?「好き嫌い」との違い

偏食の定義

偏食とは、特定の食品を避けるだけでなく、食べられる品目そのものが少ない状態を指します。新しい食材を試すこと自体を嫌がる、以前は食べていた物を急に拒否する、といった特徴が見られます。

一方で、幼児期に食べ物の好みが偏ること自体は珍しくありません。未就学児のかなりの割合に偏食傾向が見られるという報告もあります[要出典]。「うちだけ」ではない、というのが最初にお伝えしたいことです。

好き嫌いとの3つの違い

比べる点 好き嫌い 偏食
避ける品目数 数品目(ピーマン、しいたけなど) 食べられる品目のほうが少ない
拒否の強さ 嫌そうにしながらも少しは食べる 見た目や匂いだけで拒否する
生活への影響 代わりの食品で栄養は補える 食事のたびに親子で緊張する

見分ける目安は、「避けている物が何か」ではなく「食べられる物がどれだけあるか」です。

うちの子はどっち?セルフチェック7項目

当てはまる項目を数えてみてください。

  • 食べられる料理が10品目前後しかない
  • 初めて見る食材は口に入れる前に拒否する
  • 以前は食べていた物を、ある日から食べなくなった
  • 食感(ぐにゃっとした、つぶつぶした)で嫌がることが多い
  • 混ぜご飯や煮物など、食材が混ざった料理を避ける
  • 食事の時間になると本人も親も気が重くなる
  • 園や学校の給食で「ほとんど食べない」と言われたことがある

0〜2個なら、年齢相応の好き嫌いの範囲です。3〜5個なら、家庭での関わり方を少し変えることで広がる余地があります。6個以上で体重が増えていない場合は、後述する相談先も視野に入れてください。

3つ以上当てはまった方へ。「食べられる物」がどう増えていくのか、教室で見てきた子どもたちの変化をこちらにまとめています。

▶ 子どもの「食べる力」は、料理教室で何が変わるのか

なぜ偏食になるのか。原因は3タイプ

偏食の原因は一つではありません。教室で多くの子どもを見てきた経験から、大きく3つに分けると対応が考えやすくなります。

タイプA:感覚が受け付けない

食感、におい、見た目、温度。こうした感覚への敏感さが原因のタイプです。「トマトの種のぬるっとした感じが無理」「魚のにおいで食卓に来られない」といった反応が特徴です。

このタイプは、味そのものが嫌いなわけではありません。調理法や切り方を変えると食べられることがよくあります。

タイプB:経験が原因

「食べなさい」と強く言われた、無理に口に入れられた、食べて気持ち悪くなった。こうした嫌な記憶が、その食材や食事そのものへの警戒心になっているタイプです。

また、子どもには初めての食べ物を本能的に警戒する傾向があります(新奇恐怖と呼ばれます)。これは身を守るための自然な反応で、しつけの問題ではありません。

このタイプの子には、「食べなさい」の代わりに「どんな味がすると思う?」「触ってみる?」と、食べる以外の関わり方を提案する声かけが効きます。答えを求めない問いかけにすると、子どもは構えずにいられます。

タイプC:環境が原因

食卓の雰囲気、食事の時間帯、親の表情。子どもは食事中の空気をよく見ています。「また残すのでは」という親の緊張が伝わると、それだけで食欲が落ちる子もいます。

3タイプは重なることもあります。ただ、どれが強いかを見立てるだけで、次に取る行動が変わります。そして、いずれのタイプも「親の育て方が悪かった」という話ではありません。

偏食は何歳まで様子見でいい?

2〜3歳の偏食は発達の一部

2歳前後から、それまで食べていた物を急に拒否する子が増えます。自我が育ち、「自分で選びたい」気持ちが食事にも出てくる時期です。この時期の偏食は、多くの場合、発達の一過程と考えられています[要出典]。

就学前後で変わること・変わらないこと

5〜6歳になると、友達が食べているのを見て試す、給食で少しずつ慣れる、といった変化が出てきます。一方で、感覚の敏感さ(タイプA)は年齢だけでは解消しにくく、調理法の工夫が長く役立ちます。

相談を考えるサイン

次のような場合は、家庭での工夫と並行して、地域の保健センターや小児科への相談を検討してください。

  • 体重が数か月にわたって増えていない
  • 食べられる品目が10品目を下回っている
  • 特定の色・形の物しか受け付けないなど、こだわりが非常に強い
  • 食事以外の場面でも、音や肌ざわりへの敏感さが目立つ

この記事は医療的な判断を行うものではありません。気になる場合は、専門機関に相談することをおすすめします。

家庭でできる5つの対処法

① 「食べなさい」をやめる

意外に思われるかもしれませんが、「食べなさい」という圧力は逆効果になりやすいことが知られています[要出典]。食べることが「やらされること」になると、子どもは食卓そのものを避けるようになります。

まずは、残しても責めない。それだけで食卓の空気が変わります。

② 一口ルールではなく「触る・匂う・置く」から始める

「一口だけ食べて」のハードルは、偏食の子にとって想像以上に高いものです。代わりに、苦手な食材をお皿の端に「置くだけ」から始めます。次は触る、次は匂いをかぐ。食べるのはずっと先で構いません。

何度も目にした食材は、それだけで警戒心が下がっていきます。

③ 苦手食材を「作る側」に回す

教室で最もよく見る変化がこれです。

ピーマンを見るのも嫌がっていた5歳の子が、自分で種を取り、自分で炒めたピーマンを「ちょっとだけ」と言って口に入れました。食べた量はほんの一切れです。でも、その子にとっては初めての一切れでした。

自分で切った食材は「敵」ではなく「自分が作ったもの」になります

自分で切った、自分で混ぜた。その過程があると、食材は「敵」ではなく「自分が作ったもの」になります。家庭でも、ちぎる・混ぜる・盛りつけるといった簡単なことから任せてみてください。

家では任せにくい包丁や火を使う工程も、教室なら安全に挑戦できます。Table forの「子どものお料理会」は年中さんから中学3年生まで、毎月開催しています。

今月の開催スケジュールを見る

④ 食卓の雰囲気を先に変える

子どもが食べるかどうかより先に、親が楽しそうに食べる。これは遠回りに見えて、いちばん確実な方法の一つです。

「おいしいね」と言いながら食べる姿を見せる。子どもの皿は気にしない。食事中は食べ物の話以外をする。それだけで、タイプCの子は食べる量が変わることがあります。

⑤ 「食べた記録」より「試した記録」をつける

「今日は何を食べたか」を記録すると、食べなかった日が目につき、親のほうがつらくなります。代わりに「今日は何を試したか」を記録してみてください。触った、匂いをかいだ、皿に乗せた。すべて前進です。

小さな前進が見えると、親の焦りが減ります。親の焦りが減ると、子どもの食べる量が増えます。この順番です。

やりがちなNG対応3つ

ご褒美で釣る。「これを食べたらデザート」は、苦手な食材を「我慢して乗り越えるもの」として印象づけてしまいます。

食べるまで席を立たせない。食卓が「出られない場所」になると、食事そのものを避けるようになります。

嫌いな物を隠して混ぜる。気づいたときに「だまされた」と感じ、その料理全体を警戒するようになることがあります。刻んで混ぜる場合は、「入っているよ」と伝えたうえで試すほうが、長い目で見て食べられる物が増えます。

どれも、多くの親御さんが一度はやったことのある対応です。責める必要はありません。今日からやめれば十分です。

偏食を放置するとどうなる?

栄養面の心配はもちろんあります。ただ、教室で見ていて、それ以上に大きいと感じるのは「食事が親子の緊張の時間になる」ことです。

食べない子、焦る親、重い食卓。これが毎日続くと、子どもにとって食事は「楽しいもの」ではなく「乗り越えるもの」として定着していきます。そうなると、食べられる物を広げるどころか、食卓に座ること自体が難しくなる場合もあります。

ただ、関わり方を変えた家庭では、数か月で「嫌いだった野菜を食べるようになった」という声が届いています[要出典]。特別なことをしたわけではありません。「食べなさい」をやめ、一緒に作り、試したことを認める。この積み重ねです。

子どもの「食べる力」がどう育っていくのか、五感と主体性の仕組みから解説しています。

▶ 子どもの「食べる力」は、料理教室で何が変わるのか

よくある質問

Q.偏食は大人になっても続きますか?

A.幼児期の偏食の多くは成長とともに落ち着きますが、感覚の敏感さによる物は大人になっても残ることがあります。それでも、食べられる物が少しずつ増えていくケースがほとんどです。

Q.給食が心配です。園や学校にどう伝えればいいですか?

A.「嫌いな物」ではなく「食べられる物」と「無理強いしないでほしいこと」を伝えるのがおすすめです。多くの園や学校では、量を減らす、盛りつけを分けるなどの配慮に応じてくれます。

まとめ

偏食は「治すもの」ではなく、「食べられる物を少しずつ広げていくもの」です。

好き嫌いとの違いを知り、原因のタイプを見立て、「食べなさい」をやめる。それだけで、食卓の空気は変わります。焦らなくて大丈夫です。今日、苦手な食材を皿の端に置けたなら、それが最初の一歩です。

「一緒に作る」を、まずは教室で体験してみませんか。名古屋・久屋大通公園の目の前で、季節の食材を使った子どものお料理会を毎月開いています。

子どものお料理会について見る
開催スケジュール・お申し込み

偏食のことで相談してみたい方は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

鈴木あすな

Table for代表/管理栄養士・家庭料理研究家

名古屋・久屋大通のアトリエで、四季のお料理会や子どものお料理会を主宰。「食べることをLife workからLife designに」をテーマに、季節を楽しむ家庭料理を伝えています。スタッフ紹介